『神の雫』と並ぶワインのバイブル漫画『ソムリエール』の第18話「ワインの保管」、第39話「ワイン通が知らないワイン常識」より、間違った知識を紹介。「ワインで大事なことは何を飲むかより、どう楽しむか」by樹カナ
- ワインはすぐグラスを回さない
- ヴィンテージ・ワイン=値段が高くない
- ワインは空気に触れて熟成しない
- 古いワインはデキャンタージュするはNG
- ワインポンプは使い過ぎない
- 日本初のお酒は日本酒ではなくワイン
- 漫画『ソムリエール』に登場するワイン
- ワイン通にはならないこと
ワインはすぐグラスを回さない
香りを確かめる前にワイングラスをスワリングするのはNG。ワイングラスを回して空気に触れ合わせると香りが開いて味がまろやかなになると誤解されているが、まずはワインの香りそのものを確かめる。デリケートな香りはスワリングすると飛んでしまう可能性がある。
ヴィンテージ・ワイン=値段が高くない
ワインは古くなるほど値段が高くなると誤解されている。一部の骨董的価値のあるワインを除くとボルドーの5大シャトーでも収穫から30年を過ぎたものは味わいのピークを過ぎてしまい、価格も下がることがある。もちろん20年じゃまだまだという例外のワインも多い。味だけの観点で言えば、目安として3000円以下のワインは保管せずに早めに飲む。味わいに変化が出るのは5000円以上のワイン。それでも20年以内に飲むのがおすすめ。
ワインは空気に触れて熟成しない
「コルクを通してワインが空気に触れて呼吸することで熟成される」は誤解。ワインの味がボトル熟成で変化する理由は今も科学的に解明されていない。
古いワインはデキャンタージュするはNG
デキャンタージュの目的はボトルの澱を取ってワインに空気を触れさせ香りを開かせる。しかし20年のボトル熟成を超えるものはデキャンタージュによってワインの複雑な芳香が飛んでしまうこともある。デキャンタージュするかは一口飲んで還元臭(腐ったゆで卵のような匂い)がする場合のみ。新しいワインで香りが閉じている場合は、デキャンタージュによってワインの温度が上がり香りが開くので良い。
ワインポンプは使い過ぎない
ボトルを真空にするワインポンプをシュコシュコするのはNG。ボトル上部の空気を吸い上げるタイプは、ワインの揮発性成分も飛んでしまう。1ボトルに使うのは1回。シュコシュコやっている動画があるが、あまり良くない。使うたびに1回。
日本初のお酒は日本酒ではなくワイン
日本で最初のお酒は当然、お米から造った「日本酒」と思われているが、実はワイン。紀元前の縄文時代、稲作が伝播する前は山葡萄などの果実を醗酵させた果実酒(ワイン)が飲まれていた。長野県富士見町の井戸尻遺跡からは酒の仕込みに使われた土器が発掘されている。『古事記』や『日本書紀』でスサノオが退治する酒獣ヤマタノオロチが飲んでいたのも果実酒を記していると思われる。
漫画『ソムリエール』に登場するワイン
シャトー・ミュザール
- 国:レバノン
- 産地:ガジー村
- 葡萄:カベルネ・ソーヴィニヨン、サンソー、カリニャン
世界最古のワイン産地のひとつといわれる中東レバノンの赤ワイン。このワイナリーの畑は海抜1000メートルの場所にあり兵器金は25度前後。ブドウの生育期に雨が降らない乾燥気候。気候、土壌、歴史の三つが詰まったブドウ作りの理想の地。戦争のため収穫できないこともある。『ソムリエール』では第17話「橋」に2000年が登場し、レバノンで橋を造った日本人の退職者のために提供した。内戦が多いレバノンでワインが美味しくなるために最も必要なものは「平和」である。ワインは心に橋をかけてくれる。
ペリエ・ジュエ・ベル・エポック
- 国:フランス
- 産地:シャンパーニュ
- 葡萄:シャルドネ、ピノ・ノワール、ムニエ
第34話「アイドルタイム(待機時間)」に登場。ガラス工芸家のエミール・ガレが描いたアネモネの絵がデザインされたボトル。喫茶ロデオで働く水上麻衣がバレンタインデーの日、好きな人への告白で一緒に飲んだ。途中でコルクが折れたものを樹カナが布ナプキンをかぶせながらコルクスクリューで抜いた。
ウインダウリ・桜シラーズ
- 国:オーストラリア
- 産地:ニューサウスウェールズ州
- 葡萄:シラーズ
エチケットに描かれた桜は戦争の捕虜収容所カウラの桜。日本兵約1000人が大脱走を企て200名以上の死者を出したことを偲んで植えられた桜。『ソムリエール』では33話「それぞれの桜」で登場。歴史の不幸は語り合い信じ合い愛し合うことでしか超えられない。そのためにワインが生まれたのであれば、それは素晴らしいこと。
モーゼル・ザール・ルーヴァー ・リースリング1990年
- 国:ドイツ
- 産地:モーゼル
- 葡萄:リースリング
第72話「ワイン嫌い」で登場。世界で最も過酷なブドウ畑と呼ばれるドイツのドイツのシャルツホフベルクで生まれたリースリング。畑の最大斜度が60度。断崖絶壁で命綱なしでは作業ができない。この場所で1000年にわたって這うように葡萄を植え、枝を刈り、命の危険を冒してブドウの房を収穫してきた。そこじゃなければ奇跡のような味わいは生まれない。神が試練を与えた畑だからこそ、そこでしか生まれない感動がある。心を癒すピュアな香り、日だまりの暖かさ、風のやさしさがあるワイン。
ワイン通にはならないこと
最後に、「ワイン通になるのではなく、ワイン好きになるべし」が漫画『ソムリエール』の教えである。