
- 国:日本(京都)
- 種類:アルト
- アルコール:5.0 %
- 原材料:麦芽、ホップ
「黄桜 京都麦酒 ブラウンエール」は、1995年、京都初の地ビールとして誕生した「京都麦酒」シリーズのひとつ。全国でも7番目という、地ビール黎明期から歩み続けてきた一本である。
その赤は、朱塗りの鳥居、紅葉、時代祭の装束。京都という街に古くから存在してきた「赤」を連想させる。
造り手は、日本酒で知られる黄桜。清酒造りで培った醸造技術を生かし、日本酒の仕込みにも使われる京都・伏見の名水「伏水」で醸している。

京都駅の土産物店などでは、「ペールエール」「ゴールドエール」とともに3本セットでも販売されている。京都の名所を写真に収めて持ち帰るのもいい。旅の記憶を酒にして持ち帰るのもいい。三本並べれば、京都の季節を詰めた小さな酒蔵になる。
アルトは、ドイツ・デュッセルドルフ地方に伝わる赤銅色のビール。ドイツ語で「古い」を意味する「Alt」の名の通り、ラガーが主流となる以前から続く上面発酵の伝統的な製法で造られる。華やかなフルーティーさを前へ出すのではなく、麦芽の甘み、香ばしさ、ホップの苦味を静かに重ねる。
新しさを競わない。古いものを、古いまま残すのでもない。受け継いできたものを、今の一杯として飲ませる。その姿勢は、どこか京都そのものにも似ている。
味わい

グラスに注げば、赤銅色。夕陽を受けた寺院の柱のような、温かみのある褐色が浮かぶ。
口に含むと、ホップの苦味が、細い線を引く。秋の夕暮れに吹く風のように、頬を撫でて通り過ぎる程度の苦味。そのあとから麦芽由来のキャラメルを思わせる甘みが現れる。苦い。甘い。どちらも前へ出すぎない。鉦や太鼓、笛の音が、それぞれ別の音色を持ちながら、一つの行列になって都大路を進んでいく。
かなり美味しい。濃色ビールの見た目から想像するほど重たくなく、モルトのコクを残しながら、飲み口にはきちんと余白がある。
華やかな春ではなく、少し乾いた風が吹き始める京都の秋。平安から明治へ、さまざまな時代の装束をまとった人々が静かに行列する「時代祭」のように、苦味、香ばしさ、甘みが順番に舌の上を通り過ぎていく。京都の秋を赤銅色にしてグラスへ注いだようなビールである。
料理とのペアリング

黄桜公式のおすすめは、餃子、冷奴、串カツ。
このビールは単体で主役になるというより、食卓に入った瞬間に力を発揮する。
冷奴:◎
淡い豆腐を、ブラウンエールのモルト感がふわりと包む。最初はビール。次に豆腐の柔らかな甘み。そして最後に醤油の香りが追いかけてくる。白い豆腐の静けさに、赤銅色のビールがそっと羽織を掛ける。穏やかだが、相性はかなりいい。
餃子:○
餃子の脂が入ることで、ビールの苦味が少し鮮明になる。しかし、濃すぎない。焼き目の香ばしさと麦芽の香ばしさが重なり、むしろ苦味が心地よく感じられる。
餃子を食べる。ビールを飲む。また餃子へ戻る。箸とグラスが、自然に往復する組み合わせだ。
焼きそば:○
こちらも餃子と同じく、料理の油とソースによってビールの苦味が輪郭を増す。甘辛いソースのあとに赤銅色の液体を流し込むと、甘さを一度断ち切ってくれる。それでいて、モルトの甘みまで消えない。焼きそばの庶民的な力強さと、ブラウンエールの香ばしさ。秋祭りの屋台で出会ったような、気取らない相性である。
醸造所(ブルワリー)

黄桜株式会社は、京都府京都市伏見区横大路に本社を置く酒造メーカー。1925年(大正14年)、伏見の蔵元「澤屋」(現・松本酒造)から分家する形で創業した。スローガンは「くつろぎ、うるおい、かがやく。」
かつては河童をキャラクターにしたテレビCMでも広く知られた。
宝酒造の「松竹梅」や月桂冠と並び、京都・伏見を代表する全国的な酒造メーカーのひとつ。伏見は、兵庫の灘、広島の西条と並ぶ「日本三大酒処」として知られている。
社名の「黄桜」は、当時の社長が黄桜の花を好んでいたことに由来する。黄桜とは、淡い緑色を帯びた白い花を咲かせるサトザクラの一種である。
伏見の酒造りを支えてきたのが、良質な地下水「伏水」。ミネラル分をほどよく含む中硬水で、発酵がゆるやかに進むため、口当たりがやわらかく、ほのかな甘みを感じさせる酒に仕上がりやすい。ミネラル分の多い硬水を使い、発酵が力強く進むことで辛口に仕上がる灘の「男酒」に対し、伏見の酒は古くから「女酒」と呼ばれてきた。
黄桜は日本酒だけでなく、ビール造りにも力を入れている。その完成度は高く、日本酒メーカーが造る“もうひとつの酒”という枠に収まらない存在感を放っている。
















































































































