1万円以上する神のワインたち。なかなか手が届かない高嶺の花たち。こんなワインもあるんだと眺めるだけでも面白い。
なぜワインが1万円以上もするのか
格付けチェックで1000円台と10万円のワインをブラインドで飲んだとき、間違える人も多いワイン。美味しさが変わらないので、なぜ価格帯が違うのか不思議な人も多いだろう。もちろん味や手作業の手間の違いはあるものの、価格が違うのはマーケティングによるもの。主に4つの要因で値段が高騰する。
- 歴史・伝統
- 希少価値
- 評論家の評価
- 有名税
ブルゴーニュやシャンパーニュというだけで他の産地に比べ値段は上がる。また希少価値や有名税に加え、評論家の評価点もワインの価格に影響する。投機価値を見出した投資家が値段を釣り上げる動きを見せる。ソムリエの佐々木健太さんは味の美味しい頭打ちは3万円まで。それ以降はブランドや希少価値など味以外の部分が付加され珍重されると語る。
1万円台の高級ワイン
ルー・デュモン・シャンボール・ミュジニー
- 国:フランス
- 地域:ブルゴーニュ(シャンボール・ミュジニー)
- 葡萄:ピノ・ノワール100%
- 年代:2020年
- 生産者:ルー・デュモン
『神の雫』で神咲雫が第十の使徒を探すためブルゴーニュを訪れたとき2005年を仲田晃司に飲ませてもらった。静かな森にさらさらと降り注ぐ木漏れ日。このイメージを上りつめていくと、泉や舞い飛ぶ蝶や様々な自然の美が待ち受けている。そんなワイン。
ドメーヌ・ジョセフ・コラン サン・トーバン 1er ラ・シャトニエール
父マルコ・コランの同じ2005年が『神の雫』で「槍ヶ岳のワイン」として登場。現在では入手困難。ジョセフ・コランは次男。
バローロ アレステ ルチアーノ サンドローネ
2001年が『神の雫』で第六の使徒。当時の呼称はルチアーノ・サンドローネ・バローロ・カンヌビ・ボスキス。本来は小ぶりの樽を使うが、大きめの樽を用いてエレガントなバローロを産み出した。宇宙そのものの理を表現したと言っても過言ではないワイン。本当の優しさを教えてくれる弥勒菩薩半跏思惟像。
コンドリュー・ラ・ドリアンヌ・ギガル
- 国:フランス
- 地域:ローヌ地方
- 葡萄:ヴィオニエ100%
- 年代:2021年
- 生産者:ギガル
フランスのローヌ地方の帝王。舌の上に載せたときの盛り上がるような一体感。優しい黄金色の色合い、輝いているんだけど押しつけがましくない。浴びた光のうちほんの半分だけ返してくれるような。宝石に喩えるならトパーズのようなワイン。
マルセル・ダイス・アルテンベルグ・ド・ベルグハイム・グラン・クリュ
- 国:フランス
- 地域:アルザス
- 葡萄:リースリング、ゲヴュルツトラミネール、トカイなど13種
- 年代:2021年
- 生産者:マルセル・ダイス
アルザスの常識を覆すテロワールのワイン。葡萄品種至上主義のアルザスワインのあり方に対するアンチテーゼとして、アルザスの伝統品種13種をすべて使って造られる。わずかな貴腐菌がのり、その甘みとテロワールの深遠なミネラルが渾然一体となって複雑な世界観を作り上げる。『神の雫』で2005年が登場。体が虚空に浮かぶような香り。雄大な大地を望む空に漂う。大地の目覚めだ。無数の草や作物や木々が芽を吹き、小さな生き物たちが地から這い出て生命の歌を口ずさみ始める。アルザスの早春の、生命と光に満ちあふれた春の訪れのようなワイン。
ウルトレイア・デ・バルトゥイエ
- 国:スペイン
- 地域:カスティーリャ・レオン
- 葡萄:メンシア主体
- 年代:2021年
- 生産者:ラウル・ペレス
『神の雫』で2010年が登場。スペインでグラナダの夕陽を見ながら飲んだ。夕陽の色と異なるルビー色。その奥には沈みゆく夕陽だけが抱え持つ哀愁と孤独感、明日への期待感がある。このワインは何も語らない。振り返ろうとしない。それを追い求める我々に予感させてくれる。もう一度きっと会える。グラナダの夕陽に、アルハンブラに沈む夕陽に。まさにグラナダの夕陽のワイン。
ドメーヌ・カーネロス・ル・レーヴ
カリフォルニア州カーネロスのシャルドネ100%のスパークリング。ル・レーヴは夢。漫画『ソムリエール』では2000年が現在最高の米国スパークリングとして紹介。ワインいっぱいで生きる勇気をくれることがある。その一杯で、どんなに世界がつらくても信じてみようって気にさせてくれる。
シャンボール・ミュジニー
ブルゴーニュの高級ワイン、シャンボール・ミュジニー。
グレッツァー・アモンラ
- 国:オーストラリア
- 地域:南オーストラリア州 / バロッサ・ヴァレー
- 葡萄:シラーズ100%
- 年代:2021年
- 生産者:グレッツァー
オーストラリアの赤ワイン。『神の雫』では2003年が登場。発見のワイン。アンコール・ワット。
ルーチェ デッラ ヴィーテ
- 国:イタリア
- 地域:トスカーナ州
- 葡萄:メルロー、サンジョヴェーゼ
- 年代:2020年
- 生産者:ルーチェ
「ルーチェ」のセカンドワイン。『神の雫』では1997年が登場。夏の終わり、暮れなずむ草原の香り。ほんのひと口舌の上に載せるだけでそれは、大皿一杯のフルーツに化身する。溢れかえる山吹色、オレンジ、ライムグリーンや群青、そして鮮やかな夕陽の赤。シドニー生まれのアーティスト、ケン・ドーンの絵画そのもののワイン。
シャトー・モンテレーナ・シャルドネ
1976年「パリスの審判」で優勝した伝説を継ぐ白ワイン。
シャサーニュ・モンラッシェV.V.
オイリーでナッツっぽいけど、ミルキーではなくてもっと強いミネラルを感じる。ムルソーのような温かみはなく、もっと厳しい冴え冴えしたワイン。男性的な冬に向かう山の光景。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・ラ・カーサ
1985年のヴィンテージを遠峰一青がトスカーナマラソンを完走したときのトロフィーにしたワイン。このワインはラファエロの名画「ガラテアの勝利」。その胸のすくような勝利の余韻。勝利の女神の甘いキスだ。
マルセル・ダイス・アルテンベルグ・ド・ベルグハイム・グラン・クリュ
アルザスのすべての伝統品種13種の混植。『神の雫』では2005年が登場。雫と遠峰一青が同時に表現。大地の目覚めだ。無数の草や作物や木々が芽を吹き、小さな生き物たちが地から這い出て生命の歌を口ずさみ始める。アルザスの早春の、生命と光に満ちあふれた春の訪れのようなワイン。
フェレール・ボベ・セレクシオ・エスペシャル
スペイン、カタルーニャの赤ワイン。2008年が『神の雫』の第十一の使徒。命尽きようとする者の残す「残照」、「夕陽の遺言」
ペリエ・ジュエ・ベル・エポック
- 国:フランス
- 地域:シャンパーニュ
- 葡萄:ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ
- 年代:2015年
- 生産者:ペリエ・ジュエ社
「フルール・ド・シャンパーニュ(シャンパンの華)」「アート・オブ・シャンパン」と称されるプレステージ・シャンパーニュ。親交のあったエミール・ガレに依頼して、白いアネモネの花が描かれたボトルが描かれた。
マルク・コラン サン・トーバン 1er ラ・シャトニエール
サントーバンはピュリニーモンラッシェより標高が高く畑の大半が西向きの斜面にある村。漫画『神の雫』では2005年を「槍ヶ岳」のワインと表現。入手困難。
アマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ・クラッシコ・ベルターニ
- 国:イタリア
- 地域:ヴェネト州
- 葡萄:コルヴィーナ・ヴェロネーゼ、ロンディネッラ
- 年代:2012年
- 生産者:ベルターニ社
神咲豊多香が99年を北京ダックと合わせて飲ませ、中華料理人の人生が変わったイタリアの赤ワイン。ヴェローナ近郊のヴァルポリチェッラで造られる。葡萄は収穫後すぐに2階や屋根裏で3ヶ月から半年も陰干しされる。水分が蒸発して糖度が上がったブドウを絞り、4年から6年の樽熟成を経て瓶詰めした状態で1年から3年の熟成を行う。コルクを開けた瞬間から長い眠りから覚めたように香りを放つ。音楽のカンツォーネにピッタリなワイン。アカシアの蜜のように甘やかな香りと、宵を待つほんのひとときにしか味わえない期待と切なさの入り交じったワイン。アマローネの品のある甘味とブレンデー香がチャーシューのコクのある甘味や個性的な香辛料と合い炒飯にもマリアージュ。
シャトー・グリュオ・ラローズ
- 国:フランス
- 地域:ボルドー(サン・ジュリアン)
- 葡萄:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド
- 年代:2017年
- 生産者:シャトー・グリュオ・ラローズ
ボルドー赤ワイン。神の雫では1999年と2000年が登場。サン・ジュリアンが誇る第2級シャトー。「王のワイン、ワインの王」という意味がエチケットに書かれている。華やかで濃厚。でもエチケットの女性的なイメージとは正反対で、力強く筋肉質なワイン。戦士を迎え祝い、そして癒してくれる凱旋門のワイン。1999年は『神の雫 マリアージュ』で登場。ソムリエの鴨志田がかつての恋人すみれと飲んだ。買った当時は渋かったが10年以上たち、ワインが時の魔法をかけたことで柔らかく花開いた。中トロに醤油をつけず、ワイン塩をかけて食べた。アンティーク時計の振り子が刻む音色に耳を傾けながら振り返る思い出のようなマリアージュ。
ピエール・カロ・クロ・ジャカン・ブリュット・グラン・クリュ
- 国:フランス
- 地域:シャンパーニュ
- 葡萄:シャルドネ100%
- 年代:NV
- 生産者:ピエール・カロ・エ・フィス
『神の雫 マリアージュ』で遠峰一青が「鮭のムニエル・ヴァン・ブランソース」に合わせた。どこまでも透明な黄金、泡は天使の吐息のように繊細。液面で弾ける泡はワインの香りを振りまきながら誘ってくる。エロティックなシャンパーニュ。鮭のムニエル・ヴァン・ブランソースが着物であるならば、ピエール・カロ作「クロ・ジャカン・ブリュット・グラン・クリュ」はその帯。どちらもお互いを引き立て合いながら芸術品としてそれぞれが独立している。色彩豊かな伝統工芸「加賀友禅」のマリアージュ。
ドン・メルチョー・カベルネ・ソーヴィニヨン
- 国:チリ
- 地域:セントラル・ヴァレー、マイポ・ヴァレー
- 葡萄:カベルネ・ソーヴィニヨン主体
- 年代:2019年
- 生産者:コンチャ・イ・トロ
世界中のカベルネ・ソーヴィニヨンを代表する最高峰のプレミアムチリワイン。『神の雫』では2004年が登場。バニラの香り。ビターなチョコレート、ブラックチェリー、凝縮感もあるけどとげとげしい酸やタンニンは感じない。飲みやすくて、まるで一生懸命ソムリエが開かせたような、開けてすぐ美味しいワイン。クリムトの「抱擁」のようなワイン。
シャトー・イガイ・タカハ ”美夜(ミヤ)” シャルドネ
- 国:アメリカ
- 地域:カリフォルニア州(サンタ・バーバラ)
- 葡萄:シャルドネ
- 年代:2022年
- 生産者:シャトー イガイタカハ
アメリカ西海岸サンタ・リタ・ヒルズにある「ダイアトム」というワイナリーのシャルドネ。醸造家グレッグ・ブリュワー氏が日本の芸術家の影響を受け、畑の名前ではなくワインのイメージを表現する漢字のエチケット。ステンレスタンクのみの純粋なシャルドネ。海の香り、陽光が届かない海底を連想する微かな香りがするワイン。『神の雫』では2010年が登場。牡蠣に岩塩以外は何もつけず合わせた。
シャトー イガイタカハ 花偲 ソーヴィニヨン・ブラン
- 国:アメリカ
- 地域:カリフォルニア州(サンタ・バーバラ)
- 葡萄:ソーヴィニヨン ブラン
- 年代:2022年
- 生産者:シャトー イガイタカハ
『神の雫』では2010年が登場。「第十の使徒」を探す途中のハワイのホテルで日本人に振る舞うワインを遠峰一青がセレクト。さらさら舞い落ちる桜の花びらを見上げながら友と酌み交わした日を思い出す。松尾芭蕉の「扇にて 酒くむかげや ちる櫻」。郷愁をそそられるワイン。ロミサーモンと水菜のハワイアンサラダと合わせた。
風音・ピノ・ノワール・シャトー・イガイ・タカハ
- 国:アメリカ
- 地域:カリフォルニア州(サンタ・バーバラ)
- 葡萄:ピノ・ノワール 100%
- 年代:2021年
- 生産者:シャトー イガイタカハ
『神の雫』では2010年が登場。ハワイのホテルで日本人に振る舞うワインを遠峰一青がセレクト。アボカドにアヒポケ(マグロの切り身)を和えたものに合わせた。マグロと合う。松尾芭蕉「さざ波や 風の薫の 相拍子」。トロピカルフルーツの香りを含んだ湖面を渡る芳しい香りを受けるようなワイン。
登美・赤
- 国:日本
- 地域:山梨県(甲斐市)
- 葡萄:カメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン
- 年代:2019年
- 生産者:登美の丘ワイナリー
『神の雫』で日本の三大シャトーと呼ばれた登美の丘ワイナリーの赤ワイン。2008年が登場。「若むらさきにとかえりの 花をあらわす松の藤浪」この光景は、切ない恋心を藤の精の踊りを通して表現した「藤浪」の舞台。
マリコ・ヴィンヤード・オムニス
- 国:日本
- 地域:長野県(上田市)
- 葡萄:カベルネ・フラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド
- 年代:2017年
- 生産者:椀子ヴィンヤード
『神の雫』で日本の三大シャトーと呼ばれた長野県上田市の椀子ヴィンヤードのワイン。長野で特別に日照時間が長い土地。2009年は金閣寺のようなワイン。背景に緑を従えた、どこから見ても完璧なその造形美。力強くて豪快なようでいて、近づくと佇まいは穏やかで静けさをたたえている。シャトー・ラトゥールを思わすクラシカルな神々しさと力強さを感じる。今飲んでも美味しく長熟もする。
シャトー・ガザン
- 国:フランス
- 地域:ボルドー(ポムロール)
- 葡萄:カベルネ・フラン、メルロー
- 年代:2019年
- 生産者:シャトー・ガザン
『神の雫 マリアージュ』に1966年の古酒が登場。神咲豊多香がドライエイジングのステーキに合わせて選んだ。この2つの名作の出逢いを味わっていると、時刻という言葉の意味に想いを馳せてしまう。ひと雫の雨垂れが時の流れとともに集まり、やがて大河となって大地にその光景を刻みつけるように、時は流れ、そして森羅万象を刻みつけてゆく。そう、この出逢いは「時と刻のマリアージュ」。
シャトー・グリュオ・ラローズ
『神の雫 マリアージュ』で時と刻のマリアージュを探す雫が神楽坂のワインバーで1970年の古酒を飲んだ。西洋杉の香りと腐葉土のニュアンス。熟成したワインだけが放つ、エロティックな動物性のアロマが豊かに感じられる。ロジックや知性ではなく、感覚そのものを表現した芸術の流れと重なるイメージ。なかでもこのワインのイメージそのものを語るのは、モーリス・ド・ヴラマンクの混沌としたなかに不思議な調和を持つ作品「赤い木のある風景」を想起させるワイン。
マルゲ・ペール・エ・フィス・ブリュット・ロゼ・グラン・クリュ・NV
- 国:フランス
- 地域:シャンパーニュ
- 葡萄:シャルドネ、ピノ・ノワール
- 年代:NV
- 生産者:マルゲ
「ラタトゥイユ」に遠峰一青が合わせたロゼ・シャンパーニュ。ブルゴーニュグラスで飲む。複雑な方法で造られる。シャルドネの果皮を軽く漬け込んだ状態で上澄のジュースを抜き取る「セニエ」という方法で取り出したロゼワインを加え、ピノ・ノワールを混ぜ合わせる。天女の唇のような透明で柔らかいピンク。食欲をそそる香りのパレード。フルコースの序章にふさわしい。忘れていた幼き日。小さな思い出が解き放たれ生き生きと蘇るのだ。「記憶(思い出)の小函」のマリアージュ。
ケイマス・カベルネ・ソーヴィニヨン・スペシャル・セレクション
- 国:アメリカ
- 地域:カリフォルニア州(ラザフォード)
- 葡萄:カベルネソーヴィニヨン主体
- 年代:2019年
- 生産者:ケイマス・ヴィンヤーズ
『神の雫』で2000年が登場。ナパ・ヴァレー・ワイン・トレインで遠峰一青とローランが飲んだ。華やかなのに柔和でふくよか。若いフランスのカベルネ・ソーヴィニヨンの乙にすました近づきにくさはまったく感じられない。厳かでありながら日々の営みのような親しみやすさを兼ね備えている。柔和で芳醇でファースト・タッチからは想像もつかない奥深さを内包している。喩えるならフェルメールの《牛乳を注ぐ女》とローラン。
5万円までの高級ワイン
シャブリ・グラン・クリュ・ムートンヌ
- 国:フランス
- 地域:シャブリ
- 葡萄:シャルドネ
- 年代:2019年
- 生産者:ドメーヌ・ロン・デパキ
シャブリのロマネ・コンティと呼ばれる白ワイン。ピンク色の貝の化石がゴロゴロする「キンメリジャン」という土壌。2005年が『神の雫』で登場。黄金色のシルクドレスを纏ったお姫様のよう。シャブリ独特のテロワールは感じず魚介料理と合わせると芳醇な海の香りが溢れ出て、人魚姫が衣を脱いで海に帰るようなワイン。
シャルツホフベルガー・ガビネット
- 国:ドイツ
- 地域:モーゼル
- 葡萄:リースリング
- 年代:2018年
- 生産者:エゴン・ミュラー
2005年は世界最高のリースリング。バカでかい山や真っ黒な森、とてつもなく長い余韻。俺が知る限り世界で最高のリースリングのひとつだ。こいつは別格だ。とにかくミネラルが凄え。それとスケール感を伴った余韻の長さ。そんなドイツワイン。
ラ・ニエータ 2006
スペイン、エグレン家の造り出すテンプラニーリョ100%の赤ワイン。第十一の使徒を探す中でスペインで神咲雫が同じ2006年のヴィンテージを飲んだ。バルセロナ郊外の小高い丘にある「グエル公園」。アントニオ・ガウディのアートと自然が一体化し、住宅地として造られたが、今は世界遺産になっているあの公園から見える夕陽のようなワイン。
ロッソ・ミアーニ
- 国:イタリア
- 地域:フリウーリ州
- 葡萄:メルロー、レフォスコ
- 年代:2020年
- 生産者:エンツォ・ポントーニ
イタリアで最も入手困難でカルト的なワイン。ミアーニを表現する有名な言葉がある。「いつ入荷して、どこに行けば買えるのかさえ、尋常の努力では分からない。それでもあえて言う。ミアーニは飲まねばならない。簡単に買えないからと言って放棄するほどミアーニは半端な存在ではなく、またそれで諦める程度の情熱ならば、情けないではないか。ミアーニの無い人生など、もはや考えられるはずもない」。『神の雫』で遠峰一青がマキに頼んで入手してもらった。リヒャルト・シュトラウスの歌曲に乗せて官能的に踊り狂うサロメ。このワインは官能そのもの。血の匂いのする悪魔的頽廃。凝縮を極めたワイン。狂気のこだわり。
ビルカール サルモン キュヴェ エリザベス サルモン ブリュット ロゼ
『神の雫』では2000年を遠峰一青が第八の使徒候補に挙げた。1818年から続く伝統あるシャンパーニュ・メゾン「ビルカール・サルモン」の創始者エリザベス・サルモンを讃えて造られたスペシャル・ロゼ。強さと優しさを同時に携えた女性である。そして見上げるように高く、完璧なバランスで葉を繁らせる。一本の樹であり、モニュメントである。彼女は風に揺らぎながら、私を無言で受け入れてくれる。誰よりも優しく、誰よりも厳しく。あなたは手を差し伸べ、私を導いてくれる、後ろ姿の「マドンナ」
クリスタル・ブリュット
- 国:フランス
- 地域:シャンパーニュ
- 葡萄:ピノ・ノワール、シャルドネ
- 年代:2015年
- 生産者:ルイ・ロデレール社
『神の雫』で第十二の使徒を探す中で2004年が登場。遠峰一青が最も好きなシャンパーニュ。大地を感じる。一流のワインだけが持つオーラに溢れている。ギアナ高地。むせかえるようなグリーングラスの香りがたち込めている。金色の光が降り注ぐギアナ高地の豊な自然が放つ魅惑のアロマ。生命の賛歌そのもののワイン。金色の光が降り注ぐギアナ高地の豊かな自然が放つ魅惑のアロマ。プレステージ・シャンパンの始まりといわれ、かつては本物のクリスタル瓶を使っていた。
プイィ・フュメ・シレックス・ディディエ・ダグノー
- 国:フランス
- 地域:ロワール地方
- 葡萄:ソーヴィニヨン・ブラン
- 年代:2019年
- 生産者:ディディエ・ダグノー
『神の雫』で2006年が登場。大きめのボルドーグラスで飲む。透明なのに口に含むと、その透明さが嘘みたいな立体感を現し、後味に微かな柑橘の皮のほろ苦さが潜んでいる。香りを吸い込むと高原にでも連れて行かれるような浮遊感を覚える。白い花に囲まれた水辺。そこにふつふつと湧き出る透明な躍動感。生命が溢れ、金色の日差しの下に生きとし生ける者が集まってくる。命の泉だ。このワインを造った天才醸造家ディディエ・ダグノーは軽飛行機事故でもうこの世にはいない。だがこうして残されたワインの数々は、我々に永遠に忘れない感動を残してくれる。このワインが彼のいない世界にいつまでも感動を与え続けるように、国や時を越えいろんな人に永遠に愛され続けるかもしれない。命をつなぐとはそういうことだと教えてくれる。ホワイト・ダイヤモンド。永遠と継承。
ポッジョ・ディ・ソット・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
- 国:イタリア
- 地域:トスカーナ州(モンタルチーノ)
- 葡萄:サンジョヴェーゼ・グロッソ
- 年代:2018年
- 生産者:ポッジョ・ディ・ソット
2005年が『神の雫』の第九の使徒。自らに授ける月桂冠。
鼓動・カベルネ・ソーヴィニヨン・ハウエル・マウンテン
- 国:アメリカ
- 地域:カリフォルニア州(ナパ・ヴァレー)
- 葡萄:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
- 年代:2021年
- 生産者:シャトー イガイタカハ
『神の雫』では2010年が登場。「第十の使徒」を探す途中のハワイのホテルで日本人に振る舞うワインを遠峰一青がセレクト。ハワイらしい力強いロコ料理、カルア・ピッグを豚の角煮風に仕上げ、甘味のあるソイ・ソースで和えたものに合わせた。五月雨をあつめて早し最上川。
テタンジェ・コント・ド・シャンパーニュ・ロゼ
- 国:フランス
- 地域:シャンパーニュ
- 葡萄:ピノ・ノワール、シャルドネ
- 年代:2011年
- 生産者:テタンジュ
「シャンパーニュ伯爵」の意を持つロゼ。グラン・クリュ畑のシャルドネとピノ・ノワールで造られたロゼ・シャンパーニュの最高峰。高貴で優雅で純粋。華やかな香りはにぎやかだけど、押しつけがましさを感じない。ジョルジュ・スーラの点描画「グランド・ジャット島の日曜日の午後」のようなワイン。
10万円までの高級ワイン
シャトー・パルメ 1999
ボルドーの赤ワイン。お値段8万円。『神の雫』の第二の使徒。遠峰一青が選んだレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》。雫は00年のシャトー・パルメを選んだが、パルメらしさに欠けた男性的なワイン。セパージュの罠にハマった。
ドメーヌ・デュ・ぺゴー・シャトーヌフ・デュ・パプ・キュヴェ・ダ・カポ
ローヌ地方の樹齢100年の古木から造られる赤ワイン。『神の雫』第三の使徒。芸術家が末期に飲んだ団欒のワイン。父が息子たちへワインへの探究の旅を託した遺志のワイン。
ドメーヌ・フィリップ・コラン シュヴァリエ・モンラッシェ ・グラン・クリュ
2021年の最安でも8万円。他の年代は10万円以上する。ブルゴーニュ白ワインの最高峰。白ワインの名手と呼ばれた父ミシェル・コランが造った2000年は漫画『神の雫』の第五の使徒。マッターホルンのワイン。このワインの本質は「試練。そして乗り越えたときだけに味わえる大いなる達成感」と遠峰一青が表現。
20万円までの高級ワイン
シャトー・マルゴー
5大シャトーの中で、最も人気が高いのがマルゴー。かつて「あなたにとって幸せとは?」と訊かれた政治家が「シャトー・マルゴー1848年」と答えた。ヘミングウェイが愛したワインで孫娘にマルゴー(英語でマーゴ)と名付けたほど。奇しくも二人とも命日が7月2日。人生で一度は飲んでみたいワイン。
ドン・ペリニヨン・ミレジメ
1973年。お値段11万円。ひれ伏したくなるような完璧なバランス。雄々しくそれでいて優雅な佇まいをみせる、ミケランジェロの傑作「ダビデ像」のようなワイン。
ドメーヌ・アルマン・ルソー シャンベルタン 2018
『神の雫 マリアージュ』で遠峰一青が飲んだワイン。「香りにメロディがある。空から見たユートピア。完全な球体の上で、彼らは夢のような幸福を享受している」と表現。
30万円までの高級ワイン
モンラッシェ グラン クリュ マルク コラン
ブルゴーニュ白ワインの最高峰。『神の雫』で2000年のモンラッシェが登場。雫が第五の使徒と思い込んだ。アルプス最高峰モンブランのようなワイン。唯一無二でありながら他のものを見下しはしない包容力。黄金を溶かしたような美しく澄んだ液体。触れれば切れるような鋭いミネラルではなく透明で磨き抜かれた水晶のようなワイン。
50万円までの高級ワイン
クリュッグ グラン キュヴェ ブリュット
『神の雫 マリアージュ』で最後に飲むフィナーレのシャンパーニュ。お値段44万円。「摘みたての林檎のようなフレッシュさがありながら、胡桃を思わすナッティな香ばしさがいつまでも残る。金色でキラキラしていて、ふわふわとした不思議な浮遊感がある。夢を信じる心をもたらし、空をも飛べるようになるという、妖精ティンカーベルの金色の魔法の粉のようなワイン」と表現。
シャトー・ペトリュス1975
『神の雫 マリアージュ』に登場。お値段43万円。限りなく神に近いワイン。絶対神ゼウス。
100万円までの高級ワイン
ヴォーヌ・ロマネ・エシェゾー・1995
ロマネ・コンティ。爽やかで上品で軽やかな風の中に佇むクロード・モネの《散歩、日傘をさす女》
ジャック・フレデリック・ミュニエ ミュジニー
『神の雫 マリアージュ』で遠峰一青が飲んだワイン。お値段89万円。「満開の花のようで、ミュジニーらしい絹のような繊細さがあるワイン。この世で最も美しい森の光景を切り取ったような芸術作品」と表現。
100万円以上の高級ワイン
シャンボール・ミュジニー・レ・ザムルーズ2001
ブルゴーニュの赤ワイン。『神の雫』の記念すべき第一の使徒。165万円。複雑で静かで深い森のように深遠な謎めいたワイン。
シャトー・ル・パン 1982
『神の雫』で登場した70万円のボルドー赤ワイン。1980年代初めにポムロールに誕生し、約10年間で伝説になった。所有している畑はわずか2haほどで、年間生産量は500~600ケースと極少量。エキゾチックで華やかなブーケを放つ、メルローの最高傑作ともいわれるワインです。ソムリエ試験に落ちた彼女を励ますために雫が開けた。
ロマネ・コンティ
ワイン好きでなくても知っている世界一有名なワイン。お値段448万円。トヨタのクラウンと同額。『神の雫』では1940年が登場。「朝焼けだ。燃えるようなオレンジの空。おお……、朝日に照らし出されるあの巨大な山容は……、富士だ!」
ロマネ・コンティ 1983
ワインの聖書の生まれ年のロマネ・コンティ。312万円。1983年はフランスで良質な葡萄がとれる豊作年だったが、ブルゴーニュだけが冷夏の影響で極端なバラつきがあった。7月末にヴォーヌ・ロマネ村にヒョウが降り収穫前の葡萄が傷ついた。スタッフ全員で小さなピンセットで枝に残った房から傷んだ葡萄だけを取り除いた。1983年のヴィンテージは平年の半分しか収穫できなかったが、味わいは素晴らしいものになった。そこに生きる人の汗が畑の歴史と伝統を作ることを教えてくれるワイン。
アンリ・ジャイエ・リシュブール
ブルゴーニュワインの神様と呼ばれるアンリ・ジャイエの赤ワイン。お値段616万円。百の花の香りを集めたワイン。1959年は『神の雫』で神咲豊多香が末期の酒に飲んだ。それを息子の雫は流し台にジャバジャバ捨てた。
シャトー・シュヴァル・ブラン
ボルドーワイン。1982年を神咲雫は「神の雫」に選んだ。「季節を語らない。逆にすべての季節や時間を内包している。時間も空間もやすやすと乗り越えてこのワインは存在している。イリュージョンとしての完全。と同時に完全なるワインはこの世に存在しないことの証」と表現。
クロ・ド・ラ・ロッシュ 2002
ブルゴーニュワイン。遠峰一青が神の雫に選んだ。「長く伸びる影を連れてそぞろ歩きしたいつかの日のような。このワインはその色を見た時からすでに物語がはじまっている。刹那の夢幻。ワインという名の美しき幻影。生命のイリュージョン」と表現。
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